資金調達の種類を比較|3つの方法と企業規模別の選び方を解説

- 資金調達は大きく3種類に分かれる:資産活用型(アセット)・負債型(デット)・資本型(エクイティ)。
- 返済義務があるのはデットファイナンス、返済義務がないのはエクイティファイナンスとアセットファイナンス。
- 中小企業の主力は日本政策金融公庫や銀行融資などのデットファイナンス。
- ベンチャー・スタートアップはエクイティファイナンス(ベンチャーキャピタルからの出資)が中心。
- 選ぶときの軸は「返済義務の有無」「調達コスト」「経営権への影響」の3つ。
資金調達 種類 比較の結論

資金調達は、返済義務の有無と経営権への影響で選べば、ほとんど迷いません。
私は元地方銀行の法人融資担当として8年、その後も中小企業の財務支援に10年以上関わってきました。現場で見てきた実感を先に言うと、中小企業は無理にエクイティを狙うより、まず公庫や銀行のデットを固めるほうが堅いです。
一方で、急成長を狙うスタートアップにとっては返済負担のあるデットは足かせになります。だからこそ「自社がどのフェーズか」で選ぶ種類が変わる。ここを最初に押さえてください。
目次
この記事は「3分類の全体像 → 各方法の中身 → 企業規模別・状況別の選び方 → よくある質問」の順で進みます。

- 資金調達の方法と種類(3分類の全体像)
- アセットファイナンス
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
- そのほかの方法
- 企業規模別の選び方
- 状況別の選び方
- よくある質問
資金調達の方法と種類
資金調達の方法は、お金の出どころで「アセット・デット・エクイティ」の3種類に分類できます。
細かい手段は数十とありますが、根っこはこの3つです。ここを表で並べると、それぞれの性格の違いがはっきりします。
| 分類 | お金の出どころ | 返済義務 | 代表的な方法 | 経営権への影響 |
|---|---|---|---|---|
| アセットファイナンス | 自社の資産 | なし(資産の現金化) | ファクタリング、資産売却 | なし |
| デットファイナンス | 金融機関・第三者からの借入 | あり | 公庫融資、銀行融資、社債 | なし |
| エクイティファイナンス | 投資家からの出資 | なし | 株式発行、VC出資 | あり(持株比率が下がる) |
正直に言うと、この表を一度頭に入れるだけで、世の中の資金調達情報の8割は整理できます。あとは自社の状況に当てはめるだけです。
方法1:アセットファイナンス

アセットファイナンスは、自社が持つ資産を現金に換えて資金を調達する方法です。
代表例はファクタリング(売掛債権の売却)、不動産や設備の売却、知的財産の流動化など。借入ではないので、原則として返済義務がありません。
現場でよく使われるのはファクタリングです。売掛金の入金を待たずに現金化できるので、資金繰りが厳しい時の即効薬になります。
ただし手数料は決して安くない。これがアセットファイナンス最大の弱点です。私が見てきた中でも、手数料の高さに気づかず繰り返し使い、利益を削ってしまう経営者は少なくありませんでした。
方法2:デットファイナンス
デットファイナンスは、金融機関などから資金を借り入れる「負債型」の資金調達です。

日本政策金融公庫の融資、銀行のプロパー融資や保証協会付き融資、ビジネスローン、社債などが含まれます。中小企業の資金調達の主力はここです。
最大の利点は、経営権を一切渡さずに済むこと。出資と違い、株主が増えて口を出される心配がありません。返済さえきちんとすれば、会社は自分のものです。
一方のデメリットははっきりしています。返済義務と利息。業績が悪化しても返済は待ってくれません。
私が銀行員時代に痛感したのは、デットは「借りられる時に借りておく」ものだということ。業績が悪くなってからでは審査が通りにくい。順調なうちに枠を確保しておくのが、現場の知恵です。
起業直後なら、まず日本政策金融公庫を当たるのが定石です。創業期向けの制度が整っており、民間銀行より門戸が広い。
方法3:エクイティファイナンス
エクイティファイナンスは、株式を発行して投資家から出資を受ける「資本型」の資金調達です。
ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家からの出資、第三者割当増資などが該当します。返済義務がないのが最大の強みです。
赤字でも返済に追われない。だから、先行投資が大きく短期で黒字化しないスタートアップに向いています。
ただ代償もある。株式を渡すぶん、自分の持株比率が下がり、経営の自由度が落ちます。出資比率によっては、重要な決定に投資家の同意が必要になる。
私の立場をはっきり言うと、町の中小企業がエクイティを無理に追うのは勧めません。急成長を本気で狙う事業でなければ、経営権を手放す割に合わないからです。
そのほかの方法

3分類に収まりきらない方法として、補助金・助成金とクラウドファンディングがあります。
補助金・助成金は、原則返済不要のお金です。国や自治体が政策目的で出すため、使い道や対象が決まっています。
ただし注意点が一つ。多くは「後払い(精算払い)」です。先に自分で支払い、後から補助される。だから、当座の運転資金には使えないことが多い。ここを知らずに資金繰り計画を組むと足をすくわれます。
クラウドファンディングは、不特定多数から少額を集める方法。資金集めと同時に、商品やサービスのテストマーケティングにもなるのが面白いところです。
【企業規模別】資金調達方法の種類
資金調達の最適解は、企業規模で明確に変わります。

中小企業はデット中心、ベンチャー・スタートアップはエクイティ中心。この大枠を表で整理します。
| 企業タイプ | 主力となる方法 | 補助的に使える方法 | 狙いどころ |
|---|---|---|---|
| 中小企業 | 公庫・銀行融資(デット) | ファクタリング、補助金 | 低コストで経営権を守る |
| ベンチャー・スタートアップ | VC・エンジェル出資(エクイティ) | 公庫の創業融資、クラウドファンディング | 返済負担なく成長投資 |
中小企業
中小企業はデットファイナンス、特に日本政策金融公庫と保証協会付き融資を軸に組むのが基本です。
理由はシンプル。調達コストが低く、経営権を失わないから。安定した事業を続けるうえで、これ以上に相性のいい手段はありません。
運転資金の谷間にはファクタリングを補助的に、設備投資には補助金を狙う。この組み合わせで、たいていの資金需要は回ります。
私が支援してきた中小企業の多くも、結局この形に落ち着いています。奇をてらわないのが一番強い。
ベンチャー企業・スタートアップ企業

ベンチャー・スタートアップは、エクイティファイナンスを主力にするのが現実的です。
短期で黒字化しないビジネスモデルだと、返済前提のデットでは資金が持ちません。返済不要の出資で、成長フェーズを乗り切る発想が必要になります。
とはいえ、創業ごく初期は実績がなくVCも付きにくい。そこを日本政策金融公庫の創業融資でつなぐ、という二段構えがよく機能します。
経営権を渡すかどうかは、慎重に。一度出してしまった株は、簡単には取り戻せません。資金調達の高揚感で持株比率を軽く考えると、後で苦しみます。
【状況別】資金調達方法の種類
同じ会社でも、起業・拡大・存続・買収という状況によって選ぶべき手段は変わります。

状況ごとの向き不向きを一覧にしました。自社が今どこにいるかで読んでください。
| 状況 | 向いている方法 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 起業のため | 公庫の創業融資、自己資金、エンジェル出資 | 実績がないため公的融資が現実的。自己資金は多いほど審査に有利 |
| 事業拡大のため | 銀行融資、VC出資 | 成長資金は規模が大きい。返済か出資かを事業特性で選ぶ |
| 事業存続のため | ファクタリング、リスケジュール相談 | 即現金化で資金繰りをつなぐ。早めに金融機関へ相談を |
| 買収目的 | 銀行融資(買収ローン)、エクイティ | 金額が大きくなりやすく、複数手段の組み合わせが前提 |
一つだけ強調させてください。事業存続が危うい局面では、何より早く動くこと。資金が尽きてからファクタリング会社に駆け込むと、足元を見られて手数料が跳ね上がります。
よくある質問
資金調達の種類比較について、相談現場でよく聞かれる質問をまとめました。
よくある質問
最後に、現場から一言。資金調達は「いくら集めるか」より「どの種類で集めるか」で会社の将来が変わります。借りるのか、出してもらうのか、資産を換えるのか。迷ったら、まず取引のある公庫や金融機関に事業計画を持って相談してみてください。動いた人から道が開けます。
